自宅で死ぬということ|見て見ぬふりではダメな理由

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あなたが望む死はどういうものでしょうか。母は自宅で死にたい希望を持っていました。そのとき、私の中でひとり暮らしで自宅で死ぬということにイメージがなかったのですが、今回自宅で亡くなることと、孤独死について調査し、掘り下げてみました。
調査の結果、見て見ぬふりだと、やっぱり良くないと思うようになりました。私がそう思った理由も紹介します。
死は身近なもの、普段の暮らしでは意識していないかもしれません。でも、気がつくと傍にいるのも、死です。この記事が、親の死、自らの死について考えるきっかけになればと思います。

人生の最期は自宅で迷惑をかけずにいきたい

まず死に対する意識をリサーチしました。日本財団と厚生労働省の調査結果を紹介します。

日本財団による人生の最後の迎え方に関する全国調査

2021.03.29に日本財団から人生の最期の迎え方に関する全国調査結果がプレスリリースされました。

要約は以下の通りです。詳細についてはリンクからご覧ください。

日本財団は、67歳~ 81歳の方(当事者)と35歳 ~59歳の高齢の親を持つ方(子世代)に対して、 人生の最期の迎え方に関する全国意識調査を実施しました。

その結果、死期が迫っているとわかったときに、人生の最期を迎えたい場所として、当事者は58.8%が「自宅」、次いで33.9%が「医療施設」と回答しました。その理由は、「自分らしくいられる」「住み慣れているから」などがあげられました。一方、絶対に避けたい場所は、42.1%が「子の家」、34.4%が「介護施設」と回答しました。また、人生の最期をどこで迎えたいかを考える際に重視することについて、当事者は95.1%が「家族の負担にならないこと」である一方、子世代は85.7%が「(親が)家族等との十分な時間を過ごせること」と回答し、親子の考えにギャップがあることがわかりました。

人生の最期の迎え方に関する全国調査結果 | 日本財団 (nippon-foundation.or.jp)

人生の最期は自宅で迎えたい。家族の負担になりたくない。という気持ちがこの調査からうかがえます。

人生の最終段階における医療に関する意識調査

平成29年度には厚生労働省が人生の最終段階における医療に関する意識調査を実施しています。

詳細についてはリンクをご確認ください。自宅での終末期に関しては以下のような結果が出ています。

一般国民において「自宅で最後まで療養したい」と回答した者の割合は11%であ
った。自宅で療養して、必要になれば医療機関等を利用したいと回答した者の割合を
合わせると、60%以上の国民が「自宅で療養したい」と回答

平成19年度終末期医療に関する調査結果(9)終末期における療養の場所1)死期が迫っている患者

一般国民及び医療福祉従事者ともに、「実現困難である」と回答した者の割合が最も
多かった。一方で、「実現可能である」と回答した者の割合は一般国民(6%)よりも
医療福祉従事者(医:26%、看:37%、介:19%)の方が多かった

平成19年度終末期医療に関する調査結果問 49 自分が治る見込みがなく死期が迫っている(6カ月程度あるいはそれより短
い期間を想定)と告げられた場合、自宅で最期まで療養することは実現可能か

「自宅では家族の介護などの負担が大きいから」、「自宅では、緊急時に家族が大変
になるかもしれないから」と回答した者の割合が多かった。また、一般国民は「自宅
では最期に痛み等に苦しむかもしれないから」と回答した者も多かった

平成19年度終末期医療に関する調査結果問 59 自分の家族や担当する患者(入所者)が高齢となり、脳血管障害や認知症等によって日常生活が困難となり、さらに、治る見込みのない状態になった場合、自宅以外で最期まで療養させたい理由

やはり自宅で最期まで過ごしたいと思う人は多いようです。しかし実現可能だと思う人は少ない結果で、その際には医療機関を使いたいと思っているのがわかります。

また自宅で最期まで過ごすと、家族が大変、苦しみそうという印象があるようです。

自宅で最期を迎えたいが迷惑はかけたくない

どちらの調査結果をみても人生の最期を迎えたい場所は自宅と思っている人は多いようです。

場所選びのポイントは、「自分らしさ」「落ち着ける」と「プロに任せる」「家族に迷惑をかけたくない」。また、昔は一般的だった同居を前提とした「子の家」での死が絶対避けたい死に場所に入っているのも、今どきの高齢者という感じです。

私の母は特別ではなかった

できれば死の直前まで自分の自由にしていたいという意識の方が多くいます。なので、私の母が「最後まで自宅で過ごし死にたい」と思っていたのは普通のことでした。
私の母が特別な考えを持っていたわけではなく、変わった母親だという私の認識は間違っていたことがわかりました。

自宅で死ぬことの実態を調査してみた

公的機関の統計を調査し、自宅で死ぬことや孤独死についての調査結果を収集しました。その結果、孤独死は東京都で多いこと、東京都での1人暮らしの者の死についての現状が浮かび上がりました。

孤独死は東京都が一番多い

国土交通省より「国土の長期展望」最終とりまとめが、令和3年6月に発表されました。

このなかに孤独死の項があります。

東京都は10万人当たり9.6人が孤独死している

このデータは死亡時に立会人がおらず、死因が特定できないケースを集めたものです。立会人がいても死因が特定された場合は入っていません。

つまり、東京都では1年間に1万人に約1人が孤独死していることになります。

高齢者は都市に集まる

「国土の長期展望」最終とりまとめには、高齢者の増加が三大都市圏で顕著だという資料も提示されています。

これは農村部での暮らしは体が自由になるときまでで、その後の生活は生活に便利な都市部に移動しているという傾向を示しています。

このことが都市部で孤独死の多い原因にもなっているのかもしれません。

高齢者の半数以上は夫婦のみか単身で暮らしている

平成29年版高齢社会白書のデータをもとに作ったグラフをみると、高齢者は半数以上が単身か夫婦のみで暮らしています。価値観の多様化も影響しているのかもしれません。

65歳以上の1人暮らし人は、ほとんど自宅で死んでいる

東京都監察医務院では東京都23区において死因がわからず急に亡くなられた方々や事故などで亡くなられた方々の死因を調査しています。その令和3年版統計表及び統計図表から得たデータによると、令和2年に亡くなった1人暮らしの者の死亡場所は、ほとんどが自宅でした。

1人暮らしの死亡を発見するのは家人ばかりではない

同じデータから作成した1人暮らしの者の発見者は、家族ばかりではありません。隣人、知人、保健福祉関係、配達人、管理人などさまざまな人に発見されています。

日常的に近くにいる人に発見されていることがわかります。

自宅で死ぬ人の8割以上は2日以上たって見つかっている

これは、令和元年の東京都監察医務院のデータですが、自宅住居で亡くなった単身世帯の者が何日経って見つかったかの統計(令和元年)です。

1人暮らしで自宅で亡くなった場合に死の当日か翌日みつかる人は、男性で15%、女性で23%にすぎません。その他の人は死後2日以上経過してみつかっています。

死後の経過時間によって、後処理が大変になるのは想像に難くありません。

自宅で死ぬことをのぞんでいても、しておきたいこと

調査の結果をまとめると、以下のようになります。

高齢者が自宅で死ぬことは

・1人暮らしのほとんどが自宅で亡くなる
・死後数日たって発見される場合が多い
・できるだけ早期に発見されるためには、近所づきあいや友人の存在が必要
・人づきあいが苦手なら行政や福祉につながる方法もある
・日常的に誰かに会っていないと「誰かに迷惑をかける」

自宅で亡くなりたいという希望の方は多くいます。その希望をかなえるためには、1人暮らしという選択もありかもしれません。しかし、その時のことを見て見ぬふりをするのはおすすめできません。

迷惑をかけずに死にたいと思うなら、誰かにつながり日常を過ごすべきです。それは家族だけでなくてもかまわないのです。つねに誰かとつながっていることが大事になります。

子どもの側も、親が孤独死して発見されないリスクを見て見ぬふりしないで、自分だけでなく誰かが発見できるように、福祉にもつなげておけば、少しは安心なのではないでしょうか?

まとめ

自宅で亡くなることは、多くの高齢者の方にとって望むことのようです。できれば自宅で、迷惑をかけずにという思いは、1人暮らし世帯が多いことからもうかがえるのかもしれません。
しかし、現実に自宅で死亡するのは難しいと考える人は多いようです。
特に1人暮らし世帯では、発見されないリスクにつながっているようです。現実に東京都では多くの人が2日以上たってから発見されています。これでは、迷惑をかけたくないという希望はかないそうにありません。
このことを防ぐためには、ひとり暮らしのリスクを見て見ぬふりをしないで、知人や友人と日常的につきあうこと、行政とつながることがよさそうです。本人も子どもも、リスクを見て見ぬふりをしないことが満足な死に近づくポイントです。

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