この記事では、土地や建物を相続し
売る可能性があるのなら、知っておいた方がいい考え方や制度について紹介しています。
相続するのは、あっという間のできごとです。
ぜひ、予備知識を持っておきましょう。
母の病気と介護、葬式をすませて、残ったのは実家とその土地です。
誰も住まない実家には、薬局の薬、毒劇物がそのままになっていました。もちろん、住居部分は母がすんでいた頃のままです。
私自身、葬儀を終える頃までは、病気が進行している状態。実家の片づけまでは、できませんでした。
漠然と、次どうするのかと考えるのみでした。
土地を相続するとコストがかかる
相続した土地を、そのまま放置して数カ月。固定資産税の通知がやってきました。普段の生活では、あまり使わない金額です。
気になって、実家の経費がどれくらいなのか計算してみました。経費のベスト3がこちらです↓
うちの実家の場合、年間にすると、約40万かかっていました。この詳細については次の記事で触れます。
年間約40万円が、使わない資産につぎ込まれていました。恐ろしいことに、相続した現金はほとんどないため、私の貯金を取り崩していました。
数字を見て「相続した財産が、私を食いつぶしていくかも…」と、不安になってきました。
そこでいろいろ調べていたら、もっと焦る気持ちになる制度が見つかりました。
相続不動産は早期に売却すれば優遇される
とくに、私のように土地や建物など不動産を取得した場合、もし売るのであれば、早い方が得になります。
それはなぜでしょう?
①取得費加算の特例と②空き家の3,000万円特別控除があるからです。これら2つの制度について詳細に説明します。
① 取得費加算の特例
相続した土地を売った場合「取得費加算」として、所得税を減らしてもらえます。これは、土地、建物、株式などの財産を譲渡した場合に、相続後3年以内であれば、相続税を含めて費用として計算できる特例です。相続後3年以内に売却した財産について適用できる制度です。まず、以下に国税庁のページを一部引用します。
対象税目
所得税(譲渡所得)
概要
相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。
(注)この特例は譲渡所得のみに適用がある特例ですので、株式等の譲渡による事業所得および雑所得については、適用できません。
対象者または対象物
特例の適用を受けるための要件
(1) 相続や遺贈により財産を取得した者であること。
(2) その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
(3) その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。
計算方法・計算式
取得費に加算する相続税額は、次の算式で計算した金額となります。
ただし、その金額がこの特例を適用しないで計算した譲渡益(土地、建物、株式などを売った金額から取得費、譲渡費用を差し引いて計算します。)の金額を超える場合は、その譲渡益相当額となります。
なお、譲渡した財産ごとに計算します。
<算式>
相続や遺贈により取得した株式と同一銘柄の株式を保有している場合において、上記「特例の適用を受けるための要件」の(3)の期間内にその株式の一部を譲渡したときには、その譲渡については、その相続や遺贈により取得した株式の譲渡からなるものとしてこの特例を適用して差し支えありません。
No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁 (nta.go.jp)
■特例のポイント■
- 株式などを譲渡して得た事業所得と雑所得については、適用にならない。
- 譲渡所得を少なくできるので、所得税が少なくなる。
- 相続開始から相続したものを売却するまで3年以内に適用。
② 空き家の3,000万円特別控除
もうひとつ、期限付きで適用できる制度が「 空き家の3,000万円特別控除」です。これにも条件がありますが、私の場合、あてはまっていました。
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
[令和4年4月1日現在法令等]対象税目
所得税(譲渡所得)
概要
相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。
これを、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例といいます。
特例の対象となる「被相続人居住用家屋」および「被相続人居住用家屋の敷地等」
(1)特例の対象となる「被相続人居住用家屋」とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、次の3つの要件すべてに当てはまるもの(主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限ります。)をいいます。
イ 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
ロ 区分所有建物登記がされている建物でないこと。
ハ 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
なお、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなど、特定事由により相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合で、一定の要件を満たすときは、その居住の用に供されなくなる直前まで被相続人の居住の用に供されていた家屋(以下「従前居住用家屋」といいます。)は被相続人居住用家屋に該当します。
※被相続人居住用家屋が従前居住用家屋である場合の各種要件は、コード3307「被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋」で説明しています。
(2)特例の対象となる「被相続人居住用家屋の敷地等」とは、相続の開始の直前(従前居住用家屋の敷地の場合は、被相続人の居住の用に供されなくなる直前)において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地またはその土地の上に存する権利をいいます。
なお、相続の開始の直前(従前居住用家屋の敷地の場合は、被相続人の居住の用に供されなくなる直前)においてその土地が用途上不可分の関係にある2以上の建築物(母屋と離れなど)のある一団の土地であった場合には、その土地のうち、その土地の面積にその2以上の建築物の床面積の合計のうちに一の建築物である被相続人居住用家屋(母屋)の床面積の占める割合を乗じて計算した面積に係る土地の部分に限ります。
<事例>被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等の範囲
特例の適用を受けるための要件
(1)売った人が、相続または遺贈により被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと。
(2)次のイまたはロの売却をしたこと。
イ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。
(注)被相続人居住用家屋は次の2つの要件に、被相続人居住用家屋の敷地等は次の(イ)の要件に当てはまることが必要です。
(イ) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。
(ロ) 譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること。
ロ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。
(注)被相続人居住用家屋は次の(イ)の要件に、被相続人居住用家屋の敷地等は次の(ロ)および(ハ)の要件に当てはまることが必要です。
(イ) 相続の時から取壊し等の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。
(ロ) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。
(ハ) 取壊し等の時から譲渡の時まで建物または構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。
(3)相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
(4)売却代金が1億円以下であること。
この特例の適用を受ける被相続人居住用家屋と一体として利用していた部分を別途分割して売却している場合や他の相続人が売却している場合における1億円以下であるかどうかの判定は、相続の時からこの特例の適用を受けて被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に分割して売却した部分や他の相続人が売却した部分も含めた売却代金により行います。
このため、相続の時から被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を売却した年までの売却代金の合計額が1億円以下であることから、この特例の適用を受けていた場合であっても、被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までにこの特例の適用を受けた被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等の残りの部分を自分や他の相続人が売却して売却代金の合計額が1億円を超えたときには、その売却の日から4ヶ月以内に修正申告書の提出と納税が必要となります。
(5)売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
(6)同一の被相続人から相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと。
(7)親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。
特別の関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
対象者または対象物
被相続人の居住用財産を売った一定の要件に当てはまる方
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁 (nta.go.jp)より抜粋
■特例のポイント■
- 相続の開始直前に、亡くなった方以外が住んでいない。
- 居住者が死亡して、空き家になった家屋や土地を売却。
- 譲渡した所得から最高3,000万円までが控除可能。
- 昭和56年5月31日以前に建築された建物が対象。
- 区分所有建物登記がされている建物は適用外。
- 平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間の売却。
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却されること。
国税庁のホームページには、チェックシートが用意されています。
相続した空き家を売却した場合の特例(3,000 万円の特別控除(措法 35 条③))チェックシート (nta.go.jp)
不動産の利益から、3,000万円を減らせるので大きな節税になります。
土地を売る可能性があるなら早めに動くべき
土地など不動産の売却は、売り出してから売却できるまで時間がかかることが多いものです。
不動産関係の知人に聞くと、「このへんでは、2~3年かかるときもある。急ぐ人は値下げしている。」と言われました。
つまり、土地を売るかどうかのタイムリミットは、すぐそこまで来ていたのです。